「NHK音楽祭2014 第1日」

毎年秋に開催される「NHK音楽祭」も、この年(2014年)で12回目を迎えた。
今年のテーマは「後期ロマン派の壮大な調べ」と題し、、マーラー、そして本年生誕15周年を迎えるR.シュトラウスの3人の作品が上演される。
第一日に登場するソリストである アヴデーエワは、1985年モスクワ生まれ。5歳からピアノをはじめ、グネーシン音楽学校、チューリヒ音楽大学に学ぶ。両校を卒業後はコモ湖国際ピアノアカデミーにおいて、バシュキロフ、ベルマン、フー・ツォンらに師事。2006年ジュネーブ国際音楽コンクールピアノ部門第二位(一位なし)、2007年パデレフスキー国際ピアノコンクール第二位を受賞した後、2010年ショパンピアノ国際コンクールで優勝。これはマルタ・アルゲリッチ以来、45年ぶりの女性奏者による優勝ということで話題を呼んだ。また、本大会での最優秀ソナタ演奏賞も受賞している。同年12月に初来日し、NHK交響楽団と共演した。海外のオーケストラとはロンドン・フィル、ベルリン放送響、ローマ・サンタチェチーリア管弦楽団などとの共演経験がある。
指揮者のマルティン・ジークハルトはウィーン生まれ。ピアノとオルガンを学んだ後、チェロをポール・トルトゥリエ、指揮をハンス・スワロフスキーに師事。ウィーン交響楽団の首席チェロ奏者として活動するかたわら、ソリストやピアノ伴奏者としても活動している。

(ピアノ)
(指揮)

2014年10月2日 NHKホール

NHK音楽祭2014第1日 プログラム

ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467(

ピアノ協奏曲第20番を完成させてからわずか1ヶ月後に、自らが独奏を担当する予約演奏会のために書かれた作品である。1785年3月、ウィーン・ブルク劇場の演奏会で初演された。
第一楽章の弦楽器の響きは上品で華やかである。オーケストラのリズムは引き締まり、よく歌う。ソリストのアヴデーエワの音色は、とても粒が揃っていてクリアーな音色を持ち、ピアノという楽器の魅力を最大限に引き出してくれる。モーツァルトのピアノ協奏曲では、チェンバロ的な響きを強調するソリストも多いが、彼女はピアノが持つ本来の響きと音色の豊かさを重視している。時折コンマスや指揮者の表情を窺うことからもわかるように、彼女はどうやらオーケストラとの協調を重視するタイプのソリストである。フィナーレも力強く、上品に終わる。
第二楽章1967年に公開されたスウェーデン映画「短くも美しく燃え」で使われたことで、一躍有名になった楽章である。ピアノもオーケストラも、思い切り旋律をうたわせる。この両社が産み出すメロディーは、とてもロマンティックである。中間部でミスタッチとおぼしき音が聞えたが、強弱の差を思い切りつけているので、とても感情豊かな表現になっている。
第三楽章 ピアノは、明るく伸びやかに歌っている。一音一音くっきりと表情をつけて弾き分ける、というのはこういう演奏のことをいうのだろうか。彼女の音楽と音色、表現を聴いていると、なんだか楽しくなってくる。カデンツァを聞いてみて、なおさらその思いを強くした。モーツァルトの音楽は、こうでなくてはいけない。モーツァルトが現代に戻ってきたら、こんな演奏をするのだろうか。

マズルカニ長調 作品33-2(※アンコール

聴衆の拍手に応え、座りなり弾きしたのはショパンのマズルカニ長調作品33-2。彼女はショパンコンクールの覇者だが、この曲の持つ上品さ、可憐さ、力強さ、勇ましさを引き出すことに成功している。それにしても、なんと豊かな音色を持ったピアニストなのだろう。

交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック(ノヴァーク版)」(ブルックナー)

この曲は1874年が明けると同時に作曲が開始され、同年11月に一度完成を見た。ところが1878年に第三楽章が新たに書き直され、2年後の1880年に第四楽章が大幅に改訂された。1886年のニューヨーク初演のために一部が改訂されるも、1886年~1887年に大幅な改訂が施された。この改訂はブルックナー監修のもとに弟子たちが手を加え、この改訂版が本曲の楽譜として出版された。最初に出版された楽譜である事から、この版は「初版」と呼ばれている。ところがこの版は評価が低く、さらに作曲者のサインもなかったなどから、その評価は現代も一定していないそうだ。
第二次世界大戦後、楽譜の改訂作業はブルックナー協会からオーストリアの音楽学者ノヴァークに引き継がれた。彼は1880年改訂の楽譜を「ノヴァーク番第2稿」として1953年に出版、1975年には1874年に完成した楽譜が「ノヴァーク番第1稿」として出版された。1878年稿の第四楽章も1981年に発行されている。このように改訂の経緯は複雑なので、詳細はこちらのサイトを参照して欲しい。
第一楽章 最弱音を奏でる弦楽器に導かれて、ソロホルンが登場するところから始まる。しかし肝心のホルンの調子が今ひとつで、音色に魅力が乏しい。この指揮者はブルックナー解釈に定評があるらしいが、弦楽器は最弱音に魅力があるとはいえ、どうも私が求めるブルックナー解釈とはほど遠い印象。演奏全体に、力強さが欠けるのである。しなやかだが、どこか悟りきり、人生を冷めた目で見ている作曲者の世界が、そこにはある。展開部で出てくる第一主題は、非常に荒々しい響きがあり、ここでやっとクラシック通が抱いている「ブルックナー像」なるものが出てくる。木管群が奏でる音色は、森の中で小鳥がさえずっている様子を表現したものだそうだが、かわいらしい小鳥たちが、森の中で元気よく泣いている様子を表現している。コーダで奏でられる金管楽器の音色は逞しく、不安定だったホルンも調子を取り戻した。
第二楽章 チェロに導かれる第一主題は、実に重々しくどこか寂しげ。弦楽器は弱音主体で演奏するので、音色はとても透明だ。これは山の澄んだ空気を表現したものなのだろうか。指揮者は慌てず騒がず、ゆっくりとだが思い切り旋律に感情をこめつつ、淡々と音色を奏でていく。木管・金管群のやりとりはとても儚げ、そのあと出てくる弦楽器の音色は、パイプオルガンを想起させる。1:13:10秒あたりから、オケの響きは力強くなり、聴衆を一気にブルックナーの世界に引き込んでいくのだが、しばらくすると再び静寂と寂寥の世界が顔を見せる。ブルックナーは弟子も多く、人間関係にかなり恵まれていると思うが、これだけ寂しげな響きを醸し出すのは、どこか心の中に不満がくすぶっていたからか?副主題のところは、所々金管群のアンサンブルの粗が耳に入るのが気になった。最後のコーダは、オーケストラ全体で弱音を奏で、静かに幕を閉じる。
第三楽章 第二楽章終盤の失態を取り戻そうと、金管群が力強い響きを奏でるのだが、やっぱり所々であらが耳につくのは残念。外国のオーケストラに比べると、パワーという点ではどうしても見劣りしてしまう。弦楽器がしなやかな音色を聞かせてくれるから、実にもったいない。中間部のテンポは上品でゆっくり目。再び戻ってくる主部は力強い。
第四楽章 第一主題では、弦楽器・管楽器一体になった、厚みのある演奏を聴かせてくれる。第二主題になると、弦楽器は伸びやかに旋律をうたうようになる。第三主題は、冒頭で第二主題の儚げな雰囲気を一気にぶち壊してくれる。荒々しい金管群の咆吼のあと、弦楽器はのびのびと歌を歌う。ホルンに導かれて登場する展開部は、どこか不気味な雰囲気が漂う。トロンボーンと弦楽器のユニゾンでは、弦楽器の方が逞しい音楽を聴かせてくれる。再び登場する第二主題では金管群も健闘し、木管群の音色に寂寥感を感じる。とはいえ、二回目の第二主題は、アンサンブルが揃っていなかったのが気になった。最後の金管群によるコラールは、厳粛な雰囲気に満ちあふれている。ブルックナーは教会のオルガニストであったことから、彼はオーケストラでオルガンの響きを表現したかったのだろう。

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