N響ほっとコンサート〜オーケストラからの贈りもの2014

N響ほっとコンサート〜オーケストラからの贈りもの2014 出演者
小林麻耶(司会)
飯面雅子(サンドアート)
向山佳絵子(チェロ)※
(指揮)
NHK交響楽団
2014年8月3日 NHKホール

NHKは毎年夏、親子連れを対象に「N響ほっとコンサート」を企画・開催している。子ども連れの聴衆が多いことから、取り上げられる曲目も「クラシック入門」にふさわしいものになっている。オープニングで「プロムナード@展覧会の絵」が華々しく演奏され、コンサートが始まった。
この演奏会の指揮者を務める山下一史は1961年広島生まれ。桐朋学園大学を経てベルリン芸術大学に留学。1985年から1989年まで、当時ベルリン・フィルの芸術監督だったカラヤンのアシスタントを務める。この4年あまりの間、急病で倒れたカラヤンの代わりに、ジーンズ姿で指揮台に立ったことがある。1986年、デンマークのニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで優勝。国内では九州交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団などで常任指揮者・正指揮者を務めた。

N響ほっとコンサート〜オーケストラからの贈りもの2014

1890年代~1930年代にかけて活動したフランスの作曲家・デュカスが、その活動を評論家としてスタートしたことは、こちらの解説を見るまで知らなかった。孤独を愛した彼は、自作の評価に厳しいことで知られ、1920年代にはこれまで作曲した作品を破棄したと言われる。そのため、現存している作品は今回演奏された「魔法使いの弟子」を含め13作品しかないらしい。1910年代から母校であるパリ音楽院の教授をつとめ、弟子にはメシアン、ロドリーゴらがいる。
この作品は1897年に「ゲーテによる交響的スケルツォ」として発表され、デュカスの出世作になった。構想や由来は諸説あり、それ故演奏家の解釈も意見が分かれる作品である。1940年、ディズニー映画「ファンタジア」で使われて有名になった。しかしこの映画に使われた演奏は、指揮をしたストコフスキーの手によって大幅に変更され、原曲とは全く違った雰囲気を持つ作品になっている。
弟子は所用で外出する師匠から、水くみの仕事を仰せつかった。最初はまじめに水をくんでいた弟子だが、だんだんと怠け心が出てくる。弟子はほうきに魔法をかけ、自分の代わりに水くみをさせる。ほうきが水くみをしている様子を見ているうちに、弟子は居眠りしてしまう。自分が大魔法使いになった夢を見ていい気分だったが、ふと目が覚めると部屋は水びだし。ところが弟子は魔法を解く呪文を知らず、頭にきてほうきを斧で打ち砕いたところ、ほうきが増えて手がつけられない状態になる。進退窮まったところに師匠がやってきて、弟子は辛うじて命を取り留める。しかし弟子はいいつけをまもらなかったことで師匠に叱られて破門される。弟子のいたずら心、手がつけられずにあたふたしている様子、師匠にどやされたあげく破門される弟子の様子を、見事に表現していると思う。

交響詩「海」から「風と海の対話」(

ドビュッシー作曲の交響詩「海-管弦楽のための3つの交響的素描」の中の1曲である。1903年に作曲をはじめ、2年後の1905年に完成。初演は同年10月にカミーユ・シュヴィヤール指揮・ラムルー管弦楽団によって行われたが、その初演は大失敗に終わった。原因はドビュッシーの音楽らしからぬ響きを持つ作品にあったが、彼はこの曲の完成直前に不倫スキャンダルを起こし、楽団員の心証を悪くしたことも響いた。真価を認められるようになったのは、3年後の彼自身の指揮・コロンヌ管弦楽団の演奏が大成功を迎えてからである。
この演奏は少々問題がありだ。子どもたちを前にして、いいところを見せようと力み返ったのかも知れないが、金管群はやたらと力み返っているように聞こえるし、弦楽器の響きも薄っぺらい。こんな演奏を聴かされると「お子様向けに手を抜いたのではないか?」と勘ぐりたくなってしまう。後半は弦楽器群が艶っぽい音を出し、オーケストラ全体から出る熱も高くなるだけに、前半の不調が惜しまれる。

動物の謝肉祭より「白鳥」(

サン=サーンスの児童向け管弦楽曲集「動物の謝肉祭」の中の1曲として有名である。この曲はプライベートな夜会のために作曲されたもので、楽器編成も室内楽に近い。初演は1889年非公開で行われた。「白鳥」以外は他人の作品をパロディにしていること、もともと公開イベントで演奏されるために作曲されたものではないことを理由に、作曲者は生前この曲集の楽譜出版・演奏を禁じていた。1922年に公開初演されたが、その時の演奏がオーケストラ編成だったため、本作は管弦楽曲として世間に認知されている。
ソリストを務めた向山佳絵子は東京生まれ。1985年、日本音楽コンクールチェロ部門で第1位になる。東京芸術大学を卒業後、ドイツ・リューベック国立音楽大学に留学し、ダヴィッド・ケリンガスに師事。カザルス・ホールにおける定期演奏会「向山佳絵子とチェロの世界」シリーズの企画開催、ハレー・ストリングカルテットのメンバーとして活動。1998年からNHK−FM「おしゃべりクラシック」のパーソナリティを務め、人気を集める。現在は母校である東京芸大の非常勤講師を務めるかたわら、2013年からNHK交響楽団の首席チェロ奏者を務める。因みに、夫君の藤森良一も、NHK交響楽団の首席チェロ奏者である。
向山の演奏はテンポがゆったり目に設定され、芳醇でたくましい音色、ロマンティックな響きを聞かせてくれる。一音一音はっきりさせた表現は、たぶん子どもの耳を意識しているのだろう。

作品67(

1936年に作曲された作品だが、詳細な経緯は未だに不明なところが多い。一説には、モスクワにできた中央児童劇場の関係者からヒントをもらったといわれている。
演奏は、各楽器が登場人物の特徴を見事に描き出しているという感じ。アヒルは必死になって逃げるが、狼に食べられてしまう。これは演奏の巧拙をとやかく言うべきではない。むしろ、各楽器がオーケストラでどんな役割をしているかを楽しむべきだ。

(連作交響詩「我が祖国」より)(スメタナ)

展覧会の絵より「バーバ・ヤガーの小屋」「キエフの大きな門」(

「モルダウ」はスメタナの連作交響詩「我が祖国」の中の曲である。1874年に作曲され、翌年初演された。スメタナの全作品の中で最も有名な作品であり、最初の主題は歌曲・合唱曲に編曲されている。因みにこの作品はチェコ語では「ヴルタヴァ」といい「モルダウ」はこの英語読みである。この演奏ではしなやかな弦楽器、雄大で逞しい金管楽器の音色を楽しむべきだろう。「展覧会の絵」後半では、「バーバ・ヤガーの小屋」のデモーニッシュさが出ているし、最後の「キエフの大きな門」では、テンポを落として曲の迫力を全面的に打ち出している。

と、ここまで偉そうに書いてきたけど、こういうコンサートで「曲の解釈」云々するのはヤボである、ということがよくわかったコンサートでした。小さい子どもを相手に
「テンポが」
「表情が」
「解釈が」
といっても理解できないだろうしね。でもこの日のコンサートを聴いた子どもたちが、数年後、数十年後に聴衆として戻ってくるのかも知れないのだ。そういうことを考えるとこの日の出来は、お世辞にも水準が高いとはいえないと思う。昨年の「贈りもの」は不出来だったが、さて今年の出来はいかがだろうか?

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