「東京都交響楽団定期演奏会」

東京都交響楽団定期演奏会
歌劇「ゴイェスカス」から間奏曲(グラナ-ドス)
ある貴紳のための幻想曲
(以上ロドリーゴ)
バレエ音楽「三角帽子」から第2組曲(
・近所の人たち
・粉屋の踊り
・終幕の踊り
アンダルシア協奏曲()※1
序奏とファンダンゴ( スパークス編曲)※2アンコール
アランブラ(アルハンブラ)宮殿の思い出()※荘村ソロのアンコール

(ギター)
福田進一 (以上ギター)※1、2
大友直人(指揮)

2014年6月14日 かつしかシンフォニーヒルズ

「クラシック音楽館」は、ほぼ2月に1回のペースで日本国内のオーケストラの演奏会を放送している。今回は東京都交響楽団(以下「都響)の演奏会を放送した。
都響は1965年、東京オリンピック記念文化事業として、東京都により財団法人として設立された。今年(2015年)設立50周年の歴史を持つオーケストラであり、東京文化会館、サントリーホールを定期演奏会の本拠にしている。レパートリーで最も重要な位置を占めている作曲はマーラーであり、若杉弘エリアフ・インバルガリー・ベルティーニが全曲演奏会(チクルス)を実施、ベルティーニの演奏の一部はCDになっている。マーラー以外ではベートーヴェン、チャイコフスキー、ブルックナーをレパートリーにしているほか、ジャン・フルネ時代には、フランス音楽にも実力を示した。海外演奏旅行にも積極的で、これまでに旧ソ連、東欧、フィンランドなどで海外演奏会を実施している。
だが石原慎太郎が都知事になると、東京都の財政再建策の一環として文化事業削減・外郭団体の統廃合の影響が都響にも及ぶことになる。補助金削減、団員の有期契約制、能力給制度が導入されたため、オーケストラの今後を危ぶむ関係者もいる。楽団員の能力査定は東京都が行うらしいが、音楽を理解している関係者が査定をやるのかどうか甚だあやしいものがある。
当公演の指揮者・大友直人は1958年生まれ。桐朋学園大学在学中にN響を指揮してデビュー。大学では指揮法・ピアノ・コントラバス・作曲を学び、指揮法は斉藤秀雄、小澤征爾、尾高忠明らに師事した。指揮者としては、都響の他に京都市交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団などで正指揮者・首席指揮者を務めている。レパートリーは古典~現代音楽と幅広く、ポップミュージックやアニメソングも頻繁に取り上げるほか、自らが企画するコンサートでは、様々なアーティストと共演している。現在は都響の常任指揮者の他、群馬交響楽団音楽監督、京都市立芸術大学の客員教授をつとめている。

東京都交響楽団定期演奏会 プログラム

歌劇「ゴイェスカス」から間奏曲

1911年に作曲・初演されたピアノ曲を、1916年にオペラに改作した作品である。全3幕構成で、演奏時間は50分に満たない小規模なオペラである。初演は1916年1月、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場で上演された。初演の評価については大成功だったという説と、賛否両論に別れたという説がありはっきりしない。グラナドス夫婦はこの作品の初演に立ち会った後客船で帰国途中、その船がドイツ軍潜水艦の攻撃で沈められるという最期を遂げた。
ドラマティックでもなかれば情熱的でもない、端正なスペイン音楽。弦楽器の音は少々華やかさに欠ける。木管群の音はそれなりにメルヘンがあるが、金管群はパワー不足。どんな曲かどうかを知るには過不足ない演奏だが、ただそれだけ。

この演奏会のメインソリスト荘村清志は、9歳から父親にギターの手ほどきを受ける。1963年、高校生の時に来日したナルシソ・イエペスに認められ、スペインで4年間にエペスに師事する。マドリッド音楽院を中退後、スペイン・イタリア両国でコンサート活動をした後、1969年に日本でコンサートデビュー。以後、コンサート活動やギターの普及活動を活発に行う。1974年に放映されたNHK教育テレビ(現Eテレ)「ギターを弾こう」のギター講師で全国的知名度を獲得、日本人作曲家にギター作品を依嘱するなど、ギター音楽拡大に貢献してきた。

ある貴紳のための幻想曲

タイトルには「幻想曲」とあるが、実際は協奏曲である。1954年秋、巨匠としてギター界に君臨していたアンドレアス・セゴビアの以来で作曲された。タイトルの「貴紳」とは、スペイン語で「宮廷に使える紳士」というそうだが、ここでは作曲を依頼したセゴビアを指すといわれる。初演は1958年3月、サンフランシスコでセゴビアのギター独奏、エンリケ・ホルダ指揮サンフランシスコ交響楽団により行われた。
第一楽章序盤のソロとオケの演奏では、木管の音が強すぎてソロの音が聞こえない部分がある。荘村のソロは、上品で、端正で、優しい音色。アンサンブルはよくまとまっているが、情熱というのはほど遠い。
第二楽章。 ギターというよりリュートの音色に近い。ソロフルートとクラリネットは、所々力みすぎでは?という音色になっている。荘村のソロはここでも味わい深い音色を聴かせ、テクニックも安定している。弱奏時の弦楽器からは、豊かなハーモニーを聞くことがくれる。
第三楽章のリズムは力強く、ソリストが繰り出すリズムは切れがよい。
第四楽章 少しソロの音程がふらついているところがあり、オケの響きからは「情熱」というのがまるで伝わず、金管群も、所々で音を外しているように聞こえるように聞えるのは残念だった。実演ではどうだったのだろう?

アランフェス協奏曲

1939年に作曲された作品で、タイトルの「アランフェス」は、スペインの古都である。彼の地がスペイン内乱で甚大な被害を受けたため、スペインとアランフェスの平和への思いを、第二楽章では重病の妻、失った子どもに対する神への祈りがこめられているといわれている。
第一楽章は情熱的なソロの演奏で始まる。オケの演奏もソリストにあわせたのか、だんだん情熱をおびてくる。いささか不安定だった金管群も力強さを増し、力みがちだった木管群も安定してきた。思い入れたっぷりのチェロの音色もいい。ファゴットの響きが、ソリストにぴったりと支えているのがいい。始めと終わりの弱奏は表情がこもっている。
第二楽章での、イングリッシュ・ホルンの思い入れたっぷりの表情をつけた音色はとてもロマンティックであり、テンポはとてもゆったりしている。この曲はギターとイングリッシュ・ホルンの二重協奏曲のよう。こんなにロマンティックな曲だっけ?聞いていて涙が出てくるほど感動した。40分過ぎからのソロの音は、これまでと違って太くたくましい。今までの優しく、上品な響きとは打って変わり、クラシックギターからこんなに男らしい音色を引き出すなんて!43分過ぎからのカデンツァ、先ほどの音と違って、本来の荘村の持つ音に近くなった。カデンツァ終盤のオケとソロの息もぴったり。ソロの音に影響されたか、弱奏時のオケの音も上品になってきた。
第三楽章 荘村のソロと、都響が持つ澄んだ音色が最高にマッチしている。オケとソロの掛け合いは見事。荘村は細い音、柔らかい音、上品な音、優しい音を巧みに使い分け、ミクロコスモスを構成していく。52:47からの細かいパッセージも余裕でクリアする。70近いというのに、このテクニックの冴は見事というしかない。そして、ピアニッシモのギターの音で曲をしめる。見事である。

三角帽子

この曲は、ヘスス=ロポスがN響でやったばかりだから、どうしてもそちらと比べてしまう。だがエンジンのかかった都響は、持ち前の澄んだ音色を聞かせてくれる。弦楽器の音はしなやか。スペイン・ラテン的な情熱とは少々かけ離れているとはいえ、これはこれでいい演奏だろう。「粉屋の踊り」でのイングリッシュ・ホルンの音色は、決然たる決意を感じさせてくれる。そして徐々にデモーニッシュな響きが迫ってくる。怖い。「終幕の踊り」では代官との戦いが表現されるからか、これまでとは打って変わって、暑く情熱的で激しい表現が聴かれる。終盤の迫力はものすごい。最初から、この調子でやってくれればと思うともったいない。

アンダルシア協奏曲

アランフェス協奏曲以来、ロドリーゴが久々に手がけたギター協奏曲である。1967年、世界的に著名なギター・ファミリーであるロメロ一家の委嘱で作曲された、4つのギターのためのギター協奏曲である。荘村以外のギタリストのプロフィールは、こちらで紹介する。
福田進一は1955年生まれ。高校卒業後、エコール・ノルマル音楽院でアルベルト・ポンセに師事。同音楽院を首席で卒業後、1981年パリ・ギター国際コンクールで優勝。他ジャンル・楽器の競演機会が多く、教育者としてもこの舞台で共演している鈴木大介、大萩康司らを育てた。他の著名な弟子に村治佳織奏一姉弟がいる。
鈴木大介は1970年生まれのギタリスト。本公演でも競演する福田進一らに師事。早稲田大学在学中の1992年、マリア・仮名留守国際音楽コンクールギター部門で第3位に入賞。1994年、文化庁派遣在外研修員としてザルツブルク・モーツァルテウム大学に留学。帰国後は、国内外でコンサート及びレコーディング活動を展開。武満徹作品に、積極的に取り組んでいる。
大萩康司は1978年生まれ。9歳から母の手ほどきでギターをはじめた。鈴木大介と同じく福田進一門下。高校卒業後パリに留学し、エコール・ノルマル音楽院、コンセルヴァトワールで学ぶ。1998年のハバナ国際ギターコンクールで2位に入り、2000年にCDデビューを果たす。

第一楽章では、ギターもオケもほぼ同じようなリズムでパッセージを弾いていくから大変。1:17:30過ぎからのギターソロ四重奏、いかにも軍楽隊が奏でているような感じ。弦楽器の音は、スペインの陽光がさんさんと降り注ぐ太陽の光のようだ。オーケストラの力強い演奏で曲は締めくくられる。
第二楽章は弦楽器の弱奏に続いて、1stソロギターの哀愁をおびたメロディーが出てくる。大萩の4thギターのベース音の上に、福田のたくましい音色が乗っかってくる。中間部では、4人のギタリストの演奏をオケが支える。金管の音色に、もう少しラテンの色気があればいいなと思うのは贅沢か?ソリスト4人は達者な演奏を見せる。終盤の荘村のソロ、4人のギタリストの息の合った演奏は見事である。弦楽群のメゾピアノ演奏が、少々シンセサイザー的に聞こえる。
第三楽章 4人のソリストが、勢いよくギターを奏でる。まるでフラメンコみたい。ソリスト4人の演奏はとても情熱的。リズム桃テンポも、小気味よく決めていく。最後は、4人のソリストが音をぴったり合わせて締めくくる。

序奏とファンタンゴ

アンコールで演奏されたのは、ボッケリーニ作曲(スパークス編曲)の「序奏とファンタンゴ」。4人の演奏が、あたかもオーケストラ伴奏を伴っているかのように聞こえる、素晴らしい演奏である。これでカスタネット奏者が言ったら、もっと盛り上がるだろう。黄河で情熱的な4人のアンサンブル。チェンバロの音色も聞こえてきそうだ。

アランブラ宮殿の思い出

アンコール2曲目は、タレガの名曲「アランブラ宮殿の思い出」。名曲中の名曲の演奏が聴けることで、聴衆はやんやの喝采。一音一音くっきりと粒立ちの揃った演奏。決して情熱的ではないかもしれないが、枯淡の境地を感じさせるいい演奏だと思う。

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