NHK交響楽団 第1780回定期演奏会

第1780回定期演奏会
ハ長調作品61
イ長調作品81
バレエ音楽「ヨセフの伝説」作品63
1.パラディオ様式の巨大な柱廊広間
2.宝石を運ぶ奴隷、絨毯を運ぶ奴隷、2匹の白い狩猟犬を連れた奴隷
3.列柱廊に3つの輿からなる行列が出現…
4.最初の踊り
5.2番目の踊り
6.3番目の踊り
7.ズーラミト (花嫁) の踊り: 身を焦がすほどの恋のあこがれ
8.上方に男たちの行列が現れる: その先頭にいるのは上半身裸になった6人のトルコ人拳闘士たち…
9.ボクサーたちは一種の輪舞を始める…
10.そのとき列柱廊に金のハンモックが出現する…
11.最初の踊り: 羊飼いの少年の純真さ
12.2番目の踊り: 跳躍
13.3番目の踊り: 神を求め、苦悩する
15.4番目の踊り: 神の賛美
16.2人のムラット (白人と黒人の混血児) たちがヨセフに触れた瞬間、ポティファルの妻は夢を見ている時のように身を震わせる
17.ポティファルは祝宴の終了を合図する
18.日が暮れる
18.ヨセフの夢: ヨセフは一人の天使が見守るかのように自分の寝床へと歩み寄るのを見る。
19.そのとき扉が開き、ポティファルの妻が忍び込む
20.肩から腰まであらわになったままヨセフは彼女の前に立っている
21.その瞬間、松明を持った二人の召使いたちがすばやく、興奮した様子でやってくる
22.そのとき若い女奴隷が手を高くかかげて主人のもとへ走り寄る、それから多くの他の女奴隷たちも大急ぎでやってくる
23.最初の踊り: 一人はヨセフの顔につばをはきかけているように見える。
24.2番目の踊り: とうとう踊りの所作はヒステリックな荒々しさを持つ東洋的な魔女の舞踏へとエスカレートする。
25.松明を持つ奴隷と武装した奴隷を従えたポティファルが現れる
26.宮殿から数人の刑執行人が来て、赤々と燃え上がる火鉢を運び込む
27.そのとき全身金色の服をまとった大天使が現れる,ヨセフの体から鎖がはずれ落ちる、ポティファルの妻は真珠の首飾りで自分の首を絞める
28.ポティファルの妻の死体を運ぶ行列が動き出す間に、ヨセフと天使は外の空間 へと進み出る
(以上

(指揮)
NHK交響楽団
2014年4月23日 サントリーホール

コンサート・プラス

夜 作品10-3(ギルム詩)
セレナード 作品17-2(シャック詩)
(ソプラノ)
(ピアノ)
広瀬大介:訳詩
2012年9月20日 王子ホール

1780回目を迎えたNHK交響楽団の定期公演。前回はオール北欧の作曲家でプログラムを組んだが、今回は昨年(2014年)がR.シュトラウスの生誕150周年ということもあり、オールR.シュトラウスというプログラムを組んできた。しかも3曲ともコンサートステージで紹介されることは希であり、そういう意味では貴重なライブ公演になった。

NHK交響楽団 第1780回定期演奏会プログラム

祝典前奏曲 ハ長調作品61

ウィーン・コンツェルトハウス落成式典のために委嘱された管弦楽曲である。
1912年秋、ウィーン・コンツェルトハウスこけら落としを控えた発足委員会は、当時のドイツで最も高名な作曲家だったR.シュトラウスに、新作を委嘱した。彼は発足委員会に宛てた書簡の中で
「可能な限り全力を尽くす」
と返答したが、同時に
「霊感が湧いたら書く」
という記述があり、いつまでも書くという期日の指定がなかったことから、発足委員会をやきもきさせた。翌1913年5月
「これで委員会の諸氏もゆっくり眠れますでしょう」
という返答の着いた手紙とともに、演奏時間約10分のこの曲が送られてきた。
1913年10月、予定通りにこけら落とし講演が行われたが、このホールに設置されていたオルガンは作曲者の想定より大きく、「すべてのストップを用いて」と指定されていた箇所では、オーケストラの音が聞えなかったという。作曲者は初演に立ち会えず、この話を聞いて困惑した、というエピソードが残っている。オーケストラの5巻編成は、シュトラウスの作品でも例外的に大きなものである。ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロが2部編成というのは前代未聞。オルガンの演奏に導かれ、勢いよく始まる。管楽器群の響きが、オペラ「ばらの騎士」に雰囲気が似ている。11:55からのオルガンの音色はちょっと弱いが、12;45からの弦楽器の音色は艶やかである。13:50頃のアンサンブルはちょっと乱れ、金管も音を外した。それでも、オーケストラは徐々にペースを掴んでいく。だが、これだけの大編成作品は、録音・録画だとどうしても迫力がなくなるから、(お金の都合がつけば)生で聴くことをお薦めする。終盤になると、オケの演奏もだんだん力がこもってくる。初演されたのは、マーラーが亡くなってからわずか2年後。全体的に、マーラーへのオマージュが窺われる。タイトルに「祝典」という名前がついているだけあって、とても勇壮である。ドイツの国威発揚のためにはよかったのではないだろうか。

大管弦楽のための日本の皇紀二千六百年に寄せる祝典曲 イ長調作品81

近衛文麿を総理とする第二次近衛内閣は、1940年アメリカ・イギリス・フランス・イタリア・ドイツ・ハンガリー6カ国の作曲家に、皇紀(建国)2,600年を記念する祝典曲の作曲を依頼した。しかしアメリカは「適任者がいない」という理由でこの依頼を断り(当時の米日関係も影を落としたようだ)、ブリテン(イギリス)が送付した「鎮魂交響曲」は、当時の外務省から「侮辱的で、演奏するのに不適切である」として演奏を拒否された。当時のフランス政権はナチス・ドイツの傀儡政権(ヴィシー政権)なので、祝典曲は枢軸国のみで構成されることになった。
ドイツが委嘱を受けるにあたり、ナチス・ドイツ政権の宣伝相ゲッベルスが選んだのがR.シュトラウスだった。彼がこの話を受けたのは、息子の嫁がユダヤ系であるため、一族の身の安全を保障してもらうためというのが通説になっている。この曲は5つの楽曲から構成されているが、スコアにはその記載がない。また表題と音楽の内容は日本的なものとは一切関係がない。
日本初演は1940年12月14日歌舞伎座で、東京音楽学校(現:東京芸術大学音楽学部)教授ヘルムート・ヘルマー指揮奉祝交響楽団の演奏で行われ、初演から5日後には、同じコンビで録音されている。他の3曲も、同じ日に演奏された。指定されている鐘は、日本各地の寺から音程が合うものを利用した。ヨーロッパ初演は1941年10月、シュトゥットガルトで行われたが、この曲は彼の作品の中では最も演奏されない曲である(日本ですら、この演奏を含めて7回しか演奏されていない)。
この日の演奏では14個の鐘が使われたが、人数の割に心に響かないし迫力がないように感じたのは、やはり生演奏を聴いていないからだろうか。曲自体の魅力も今ひとつなのは、イヤイヤ頼まれた仕事からだろうか?これは演奏者が悪いのではなく、作品が悪いからだろう。実際この作品は凡作と言われているが、後半になると俄然魅力が出てくる。後半はまさに音の洪水。さすがに聴衆もあっけにとられただろう。初演は歌舞伎座で演奏された。最後の部分は「天皇賛歌」というサブタイトルがつけられているが、式典会場でこの曲を聴いた両陛下はどう思ったのだろうか?

バレエ音楽「ヨセフの伝説」作品63

R.シュトラウスは1895年以降、何度も自作台本を元にしたバレエ音楽を書こうと試み、しばらくすると中止するということを繰り返してきた。フーゴ・フォン・ホフマンスタールとの競作に没頭していた1912年、ホフマンスタールは、ロシア・バレエ団主催のセルゲイ・ディアギレフのためにバレエ音楽を書くよう説得する。歌劇「ばらの騎士」の構想段階で、重要なアイディアを提供していたハリー・フォン・ケラー伯爵が、このとき以上に主体的に台本作成に関わったこの作品は、ホフマンスタールとの共作という形になった。
本作は旧約聖書創世記39章に出てくる、ヨセフの物語からとられている。しかしシュトラウスは、このバレエの主人公にまるで魅力を感じず、登場人物の一人の妻が主人公を誘惑するという形で、ようやく適切な旋律が浮かんだという。オーケストラは巨大な4間編成を採用し、3つのパートで構成されるヴァイオリンは、エレクトラで採用した様式を再び取り入れているほか、以前手がけていたバレエ音楽の素材を導入している。
初演は1914年パリ・オペラ座にて、自身の指揮とロシア・バレエ団によって行われたが、この作品も「大管弦楽のための日本の皇紀二千六百年に寄せる祝典曲」同様、滅多に演奏されない作品になってしまっている。
オーケストラによるアタッカ全奏のあとに登場する、諧謔味溢れるソロバイオリンが印象的。この曲は「バレエ音楽」となっているけれど、実際のバレリーナは、こんなテンポで踊らされるのはしんどいだろうな。初演された時期はドイツ・ロマン派末期と無調派の勃興が重なり合っており、この作品もその両派がお互いに入り交じっていると思えなくもない。曲は全1幕・28曲で構成されるが、日本でほとんど演奏されることがない曲なのに、今どこの曲を演奏しているのか、テロップが出てこないないからさっぱりわからない。滅多にステージ上で演奏されない「珍曲」なのに、これは不親切としか言いようがない。
それにしても、弦楽器の醸し出す官能的な響きには参ってしまう。富豪の妻と少年の間に展開される、ドロドロの不倫愛憎劇を扱っているのだからそれも当然か。チェロとヴァイオリンのやりとりは、聞いていてぞくっときた。
1:36:50からの表現は、ベッドの上で、貴公子が貴婦人・令嬢をピストンで激しく突きまくる、邪な場面を想像してしまう。「バラの騎士」では、あまりの露骨な性的描写に赤面する婦人が多かったと言い伝えら得れるが、この曲もそういう表現が多々出てくる。踊っているバレリーナは恥ずかしくないのかな?曲の進行とともに、男女ともオーガニズムに達し、お互いを笑顔で抱きしめる光景を想像してしまう。最後はパイプオルガンの響きも加わり、ゴージャスに曲を締めくくる。

コンサート・プラス プログラム

R.シュトラウス歌曲集

夜 作品10-3
セレナード 作品17-2

コンサート・プラスはシュトラウスの歌曲の小品から2曲。作品10、作品17から1曲ずつが演奏されたが、どのような経緯で書かれたのか、残念ながらネット上ではわからなかった。
ソプラノのサンドリーヌ・ピオーは、1965年生まれのフランスのソプラノ。キャリア初期は、バロック・オペラのレパートリーで有名になったが、近年は20世紀の音楽にまでレパートリーを広げている。
ピアノのスーザン・マノフはニューヨーク出身のピアノストで、ラトビア人とドイツ人を先祖に持つ。ピアノと歌曲伴奏を学んだことでこの分野での評価が高いが、室内楽奏者としても活発に取り組んでいる。
「夜」の怖さ、「セレナード」の恋の楽しさ、未来への期待を、ピオー&マノフは、明確に描き分けていく。

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