NHK交響楽団 1779回定期演奏会

1779回定期演奏会
ペール・ギュント組曲第1番 作品46(
第1曲「朝」
第2曲「オーセの死」
第3曲「アニトラの踊り」
第4曲「山の魔王の宮殿にて」
交響曲第2番変ロ長調作品15(
交響曲第2番ニ長調作品43(
ネーメ・(指揮)
NHK交響楽団
2014年4月18日 NHKホール

コンサート・プラス
叙情小曲集第5集 作品54から
3.こびとの行進
4,夜想曲
叙情小曲集第8集 作品65から(以上グリーグ)
6.トロルハウゲンの婚礼の日
(ピアノ)
2007年2月10日 ミューザ川崎シンフォニーホール

NHK交響楽団が1779回定期演奏会の指揮者に迎えたのは、エストニア出身のネーメ・ヤルヴィである。この演奏会では、グリーグスヴェンセンシベリウスと、北欧系の作曲家の作品を並べた。
ネーメ・ヤルヴィは1937年、旧ソ連(現エストニア)のタリン生まれ。地元の音楽院を経てレニングラード音楽院に学び、エフゲニー・ムラヴィンスキーに指揮法を師事した。エストニアでキャリアを積んだ後、1980年からアメリカに活動の拠点を移す。1982年から2004年の22シーズン、スウェーデンのエーテボリ交響楽団の首席指揮者を務めるかたわら、世界各地のオーケストラでも活発に客演している。広範囲なレパートリーを誇り、ショスタコーヴィチを得意にしているほか、ロマン派音楽・20世紀音楽の解釈で知られている。

NHK交響楽団 1779回定期演奏会 プログラム

ペール・ギュント組曲第1番 作品46

ノルウェーの作家イプセンが書いた戯曲に、グリーグが曲をつけた作品である。
作者は当初この作品を上演するつもりはなかったのだが、その後舞台で上演することになった(どういう経緯があったのかはわからない)。イプセンはこの作品が舞台向きではないと思っており、音楽でその弱点を補うことを考えた。
1874年、イプセンは作曲家として有名になりつつあったグリーグに作曲を依頼する。自分の作風は、劇的でスケールの大きい舞台作品よりも小品に向いていると思ったグリーグは、イプセンからの依頼を断ろうと考えたという。だがイプセンから提示された報酬と民族的な素材に魅力を感じ、この依頼を受けることにした。作曲は難航したが1875年に完成し、1876年2月オスロ王立劇場において、ヨハン・ヘンヌムの指揮で初演され大成功を収めた。グリーグは再演を重ねる度に楽譜改訂を行い、楽譜は1908年に出版されたが、完全な形で全曲版が出版されたのは1987年である。
今回演奏された第一組曲は、原曲の8・12・13・16の4曲で構成されたもので、声楽やパートや台詞を削除している。
第1曲はおなじみ「朝」で始まる。木管群の音色はいいね。テンポは若干早めか。ティンパニの音に迫力がある。弦楽器の艶やかな一体感のある音色が素晴らしい。
第2曲は「オーセの死」。「オーセ」とは、主人公の母親の名前。冒険に出た息子の帰りを待つことなく旅立っていった母親。彼女が最後に見た風景は、一体どんなものだったのだろうか?慟哭か?それとも息子を思いやる気持ちか?弦楽器の静けさ、悲しさを湛えたハーモニーが素晴らしい。響きも柔らかい。最後は消え入るように終える。
第3曲「アニトラの踊り」。宮殿で思いを寄せる姫君と踊るダンスは、さぞかし楽しいだろう。ヤルヴィは、テンポを自在に変えて宮殿でのダンスを表現していく。ピチカートが愛撫に聞こえる。殿方のたくましい背中を、繊細な指が動く。負けじとペールの指も、むき出しになった姫君の背中を愛撫する。だが楽しい時は長く続かない。
第4曲「山の王の宮殿にて」これもおなじみの曲である。MLB(米大リーグ)では、ホームチームのチャンスマーチにこの曲が流れることが多い。時がが経つにつれて、じわりじわりと恐怖感がこみ上げてくる。ベルリオーズの「幻想交響曲」の最終楽章を思わせる曲である。曲が進むにつれてテンポもだんだん上がってくる。ティンパニの響きは、悪魔の断末魔の叫びか?

交響曲第2番変ロ長調作品15

スヴェンセンという作曲家は初めて聴くが、グリーグと同世代の音楽家であり、彼の親友だった。軍楽隊員だった父親から最初の音楽教育を受け、長じてフルート・クラリネットを学んだ。その後ヴァイオリンに興味を示し、演奏家を目指してライプツィヒで学ぶが、次第に作曲にも関心を持ち、欧米を歴訪して多彩な技法を身につける。1870年にノルウェーに帰国後は、指揮者として名前を知られるようになる。そのためか、残された作品はさほど多くない。
交響曲第2番ニ長調は1874年に作曲され、1876年10月にオスロで初演された。
第一楽章は、オーケストラ全体から出てくる透明な響きが素晴らしい。それでいて、ロマンティックな風情も感じさせる。木管群の音色はとても素朴だ。いかにも北欧の音楽らしい。このテンポと旋律は、バレエ音楽でも使えそうだ。
第二楽章はホルンの雄大な響きで始まり、クラリネットの素朴かつ寂寥感を湛えた音色がこれを引き継ぐ。33:25過ぎからの響きはワルツっぽい。36:10過ぎから音楽は急速に推進力を増していき、ドラマティックな表現になっていく。
第三楽章は、田舎のフォークダンスみたいな快活なテンポで始まったと思ったら、一転してドラマティックな弦楽器の響きは、行進曲の管楽器抜き版という印象を受ける。管楽器の気持ちよさそうなテンポで吹きまくる姿は、あふれ出る表現意欲をおさえられない様子が滲み出ている。オーケストラの響きもとても新鮮に感じ、管楽器の颯爽としたテンポが印象に残る。
第四楽章はゆったりとしたテンポで始まり、中間部は一気にテンポが速く劇的になる。豊かな自然の中で、元気いっぱいに日々を暮らす人々の光景が目に浮かぶ。雪国の厳しい情景を表現した曲かと思っていたら、これは違った。素朴で、繊細で、ドラマティックで、快活。ネット上では「ドヴォルザークに似ている」という声も上がっていた。確かに、この響きはドヴォルザークに似ている。個人的には、シューマンの交響曲にも似ていると思う。
この曲は初めて聴いたけど、とてもよかった。これだけの名曲なのに、作曲者も曲も知られていないのは不当としかいいようがない。この曲を取り上げてくれたヤルヴィに感謝。これは名演だ。その立役者になったのは木管群。彼らの力なくしては、これだけの演奏は成し遂げられなかっただろう。

交響曲第2番ニ長調作品43

シベリウスが作曲した7つの番号入り交響曲の中で、最も人気のある作品である。
交響曲第1番の初演が大成功した直後の1899年に作曲がはじまったが、作業が本格化したのは、1901年に行ったイタリア旅行の時である。ジェノヴァ郊外のリゾート地に自宅と作業小屋を借り、そこで作曲を行った。並行して数多くのイタリア音楽に触れ、対位法技法の多くを学んでいる。フィンランドに帰国後も作曲は進められ、1901年11月にいったん完成としたのち、年末に大幅な改訂作業が行われた。1902年ヘルシンキで作曲者自身の指揮で初演され、追加公演が開催されるほどの大成功であった。
第一楽章はあれあれあれ?これはどうしたことだろう?スヴェンセンで聞かせてくれた透明なハーモニーが、どこか揃っていないように聞こえる。濁ってはいないが、なんかシベリウスの音楽とは違うような印象を受けてしまうんだよな。やたらとドラマティックな印象が強く、牧歌的な印象は今ひとつ。もうちょっと透明な響きが欲しいなあ。囁くような音が出ないのは、ヤルヴィが主張するテンポが速いことも影響しているのかもしれない。みんな知っているおなじみの曲だから、他人と違った解釈を聞かせようと思ったのだろうか。穏やかさとか朦朧としている、淡いといった間隔は、この演奏はとは無縁。やたらと力強く、そして明確な隈取りがあるシベリウスである。
第二楽章序盤はかなり幻想的な雰囲気だが、奏でる音の一つ一つが力強い。だがこれはシベリウスにはマイナス。金管楽器は力強いがそれだけ。休止後の演奏はかなりドラマティック。しかし1:13:15過ぎからの木管群の響きは、哀愁感があっていい。そこからのドラマティックな盛り上がりはさすがの一言。1:14:50からの表現は、悪魔降誕を思わせるような響きであるし、1:17:15過ぎからの弦楽器のハーモニーは、心に染み渡る。金管楽器群は力強いのに演奏に透明感がないのは、それだけこの作曲家が金管楽器に対する要求が高いからだろうか。演奏する人は大変だろうな。
第三楽章における弦楽器の急速かつ荒々しい響きと、一拍休んでから出てくるオーボエは、一体何を表現しているのだろうか?猛烈な吹雪のあとの、優しい太陽の光?ティンパの荒々しい表現は、何もない野っ原に落ちた雷?そして弦楽器がじわじわ盛り上げ、ホルンが雄叫びをあげる。
そのまま途切れることなく第四楽章へ。1:27:32からの表現は、オペラのアリアを聴いているかのよう。フルートのソロは素晴らしい。このフルート奏者、とても上手だな。彼の姿を見ていると安心する。オケが奏でる低音の響きに迫力がある。ホルンがジワリジワリと危機感を煽っている。そして再び第一主題への回帰。だが直後に悲劇が。トランペットとトロンボーンの響きに迫力が致命的に欠けてしまっているのだ。弦楽器の響きは力強いだけにもったいない。1:34:30過ぎの表現はまるでワルツのよう。そして金管楽器が哀愁おびたメロディーを奏で、それにオケがユニゾンで応える。ところが、ここでまたしても痛恨のミス!トランペットが1音だけだがとんでもない音を、もちろんアンサンブルと関係のない音を出してしまったのである。極度の集中で疲れてしまったのか?それでもフィナーレは堂々としていた。指揮者の過分な要求をこなそうと、身も心もへとへとになっていたにもかかわらず。
それにしても、多少のミスに目をつぶって各奏者をたたせるヤルヴィの懐の深さといったらどうだろう!この日の出来の悪さは、楽団員が一番よくわかっているはずなのに。それでも拍手が鳴り止まず、弦楽奏者達も弦を叩いて演奏の素晴らしさを称えている。いい光景だ。

コンサート・プラス プログラム

コンサート・プラスは小川典子のピアノで、グリークのピアノ叙情曲集
この曲集は1867〜1903年にかけて作曲され、全10集66曲で構成されている。この日紹介された「第5集」は全6曲で1891年に楽譜が出版され、バラード調の曲調が多い「第8集」は1896年に出版された。
小川典子は1962年生まれ。東京音大附属高校からジュリアード音楽院に進み、ベンジャミン・カプランに師事。1983年日本音楽コンクールピアノ部門2位、1987年リーズ国際ピアノコンクール3位の実績を持つ。ジュリアード音楽院在学中の1982年にコンサートデビュー。現在はギルドホール音楽演劇学校、東京音大で教鞭を執りながら、活発な演奏活動を展開している。

叙情小曲集第5集 作品54から

3.こびとの行進
4.夜想曲
「こびとの行進」は、いかにもという感じがする。中間部の響きはファンタジーを感じさせる。「夜想曲」は、彼女と愛を確かめ合いたい雰囲気を醸し出す。情熱的、でもどこかクール。そして、さりげなく上品。

叙情小曲集第8集 作品65から

6.トロルハウゲンの婚礼の日
「トロルハウゲンの婚礼の日」は、ドイツ・リートの影響が色濃く滲み出ている。途中でミスタッチが出たのは残念。ああもったいない。だがその直後にロマンティックな旋律を奏でる。シューマンとシューベルトの影響が色濃く混ざった、独特な世界である。疲れが出たのか、最終盤は響きが汚く、口の悪い表現を許してもらえれば、いささかやっつけ仕事になってしまったのは残念である。

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