スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ

出演者:       他
監督:

舞台は源平合戦から800年後。
心に傷を負っていた流れ者のガンマンは、流れ流れて山奥深い、とある集落にたどり着く。
そこは、山奥に眠っているという「お宝」を巡って、源氏と平家の子孫が、古くからの住民を暴力で追い出し、保安官を脅し、血で血を洗う抗争を繰り広げていた。
村の古老は「お宝なんかない。伝説だ」と否定していたのだが、実際に「お宝」が発見されると、完全に狸政が吹っ飛んだ源氏・平家双方の子孫は、山と積まれたお宝を巡って壮絶な殺しあいを展開する…

キャッチコピーに
「源氏×平家×用心棒 西部劇と時代劇が見事に融合したまったく新しいエンターテイメント大作」
とあるとおり、源平合戦と西部劇を融合させ、さらに「バトル・ロワイヤル」や「キル・ビル」風の味付けをした作品である。タイトルの「スキヤキ・ウエスタン」はいうまでもなく、西部劇映画「マカロニ・ウェスタン」をもじったもの。「ジャンゴ」は同シリーズの「情無用のジャンゴ」からとられていることから、監督は「源平合戦」を西部劇風にアレンジしたかったのだろう。山形県の山奥の原野にオープンセットを建設するだけでは飽きたらず、キャスト全員に英語でセリフを覚えさせたそうだ。
だが手間暇金をかければ「いい映画が生まれる」とは限らない。この映画は、それをはからずも証明した。
日本の映画なのに、キャストにわざわざ英語でセリフを覚えさせた、監督の意図がわからない。英語学習中の香取慎吾、ハリウッド在住だという桃井かおり、帰国子女で英語に堪能な木村佳乃、伊勢谷友介以外の俳優は、英語の発音自体が怪しいと思ったので、DVDは役者本人が吹き替えたバージョンで見た。これは正解だったようだ。下手な英語の発音ほど、ストレスがたまるモノはない。
ストーリー展開はめちゃくちゃで、それまでの季節は「春or秋」の設定だったはずなのに、最後の数分間で突然雪が降り積もりのはなぜ?ネット上では「前半は、独自の世界観を堪能できた」という意見も拝見するが、あまりに独自すぎて、この映画で展開される世界に没入できない人には苦痛である。
それを示すシーンとして、私は平清盛が途中で「俺はこれから『ヘンリー』と名乗るんだ!」と叫ぶ場面をあげたい。唐突な展開なので、事情がわからない人には理解しにくいだろう。この場面はシェークスピアの戯曲「ヘンリー6世」の舞台背景となった「バラ戦争」が元ネタになっている。源平合戦は「赤」の平家が負けたが、バラ戦争の勝者は「赤」がシンボルカラーで、清盛はそれにあやかろうとしたのである。
演技陣はそれなりに味のある演技をしている。
香川照之の、優柔不断で気弱な保安官。
伊勢谷友介の、般若の如く恐ろしい表情を見せる源義経。
木村佳乃の、妖艶な踊り子。静御前の本物も、このくらい美しかったのか。
佐藤浩市と石橋貴明が見せる、ぶっ壊れた清盛と弁慶。
桃井かおりが見せる、胆力の座った老婆。
これだけの実力者に囲まれて萎縮したのか、主人公(のはず)の伊藤英明の存在感がやけに薄かった。私個人としては、主人公が下手でも脇役がしっかりしていれば満足だと思うタイプなので、それはそれでよしとする。
「金返せ!」と叫びたくなる人も大勢いるだろうが、荒唐無稽、支離滅裂、馬鹿馬鹿しさもここまで徹底すれば、国内からブーイングがあがろうが、外国人から嘲笑されようが(第64回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品作品)、それなりの評価が得られるというものだ。それを象徴するのが、映画「キル・ビル」シリーズの監督・クエンティン・タランティーノが桃井かおりに「スキヤキ」のうんちくを語り、昔のアニメに触れるシーン。「外国人が『スキヤキ』のうんちくを語るな!」という野暮はいいっこなしね。
それはともかくとして、どろんこにまみれながら夢中になって演技をした出演者の皆様に一言。

「おつかれさまでした~」

でも……興行成績はどうだったのか気になるところではある…

P.S
北島三郎が主題歌を歌っていたのには驚いた。

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